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新潟地方裁判所長岡支部 昭和39年(ヨ)161号 決定

債権者 岸野一枝

債務者 株式会社 大光相互銀行

主文

債務者が債権者を本店営業部得意先係勤務に配置替した意思表示の効力を停止する。

債務者は債権者を昭和三九年八月一六日当時の職務に復帰させよ。

申請費用は債務者の負担とする。

(注、無保証)

理由

一、債務者の債権者に対する配置替の意思表示が不当労働行為に該当して無効である所以は、申請外川上カツイにかかる当庁昭和三九年(ヨ)第一三六号、申請外田中紀にかかる当庁昭和三九年(ヨ)第一五三号各配置換効力停止仮処分申請事件に関する各決定理由中に判示したとおりである。

二、申請外川上カツイおよび同田中紀に対する債務者の配置替の意思表示の効力が各本案判決まで停止されていることは当裁判所に顕著であるところ、田中紀に対する審訊の結果および疏甲第二号証ならびに疏甲第三号証によれば、右川上らは現在に至るまで配置替の意思表示のなかつた状態に戻されることなく、右川上は本店総務部預金係に籍を置いて伝票整理および雑役に従事し、右田中は依然本店営業部得意先係のままで毎朝集金カードの整理をする以外は作業を与えられていないことが一応認められる。

元来意思表示の効力を停止する仮処分はその意思表示がなかつたと同様の状態を法律上作り出すものであるから、配置替の意思表示の効力を停止する仮処分は、配置替となつた者を原職場に戻すことを命ずる内容を当然にふくんでいるものである。

しかし申請外川上および同田中の現在の状態が前示のとおりであつて、債権者もこれらと類似の状態におかれる可能性が相当程度に大きいと見られるところ、債権者はそのような状態におかれては本件仮処分申請の目的を達しないことが明らかであるから、主文第一項の仮処分のほかに重ねて主文第二項の仮処分を求める必要性は疏明され得たものといわなければならない。

三、以上の次第であるから債権者の本件仮処分申請を相当と認め、申請費用の負担について民事訴訟法第八九条を適用し、保証を立てさせないで主文のとおり決定する。

(裁判官 宮本康昭)

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